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人生初の海外旅行について・マラガ編

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スペイン南部、アンダルシア地方最大の都市セビーリャを後にし、バスでさらに東へ、海岸都市マラガへと向かった。マラガの人口は56万人ほどで、リスボンとほぼ同じ。日本でいうと中規模の県庁所在地程度だ。

マラガではAirbnbを予約していたけれど、チェックイン時間を過ぎても1時間くらい経つまでホストと連絡が取れない。まさかここにきて道で寝るのか?近くにホステルもあったが、一泊80ユーロは高すぎる。建物の前に友達と座ってひたすら待った。

心配無用、バイクで買い出しから帰ってきたおばちゃんに迎えられ、無事に寝るところを確保した。僕はさっき着いたところですよと笑顔で言った。

 

翌日はどこに行くとも決めていなかったので、マラガ中心部の遺跡や教会を見て回った。飲食店やバーの集まるメルセー広場でパブロ・ピカソのでかい絵に見下ろされ、ここが彼の生まれた町であることを知った。そんな看板の下にも容赦なく落書きがしてあるが、ほかの町のものと比べて特に芸術性が高いわけでもない、当たり前だ。そこからすぐ近くにある、かつてピカソの家だったところには小さな美術館があった。

昼下がりにはやることがなくなってしまって、ビーチをぶらぶら歩いた。マラグエタという名前のビーチが有名で、砂でつくったような「malagueta」のオブジェは写真を撮ると結構画になる。しかしなんというか、ただそれだけのことではある。僕にとってはそのビーチよりも港の船が集まる景色のほうが美しいと感じた。どこを向いても白いものばかり目に入って眩しかった。

適当に入ったバーガーキングノルウェーから来た黒人男性と知り合った。赤道の通るウガンダで生まれてノルウェーに移り住んだ、冬は太陽が出なくてつらいと嘆いていた。毎年冬になると国を逃げ出すのだという。少し話したのち、近くでコンサートのようなものがあると教えてもらったので一緒に向かった。しかし開始予定時間を1時間過ぎてもいっこうに始まらない。

 

 

待っている間に国についての話になった。

ノルウェーといえば最近世界幸福度ランキングで首位になった国だ。僕は――なぜかはわからないが――そのことに触れるのが不躾に思われて遠慮した。しかし彼は公共福祉などに関していろいろと話してくれた。外で飲むとビール一杯が6ユーロ(うろ覚えだ)位する、消費税率は高いが医療費にも上限があるし大学教育は無料だと言った。その辺にホームレスはいないし、生活に困っている人がいたら役所がかなり親切に助けてくれるとも言った。

物乞いはポルトガルには多いだろう?と聞かれたので、確かに日本では考えられないくらいに多いと答えた。彼はノルウェーポルトガル、どちらがいい悪いというものではない、ただふた通りの道にすぎないのだという。確かにノルウェーは福祉制度が発達しているといえるのだろうが、道で知らない人に助けてもらうような体験はできないんだ、と。ポルトガルで物乞いと歩行者が話している光景のほうが、より人間味みたいなものを感じるのだ、という。

一笑に付される意見だろうか。それは国としての「でき」が違うということだろう、道で暮らさなくていいようにシステムがしっかりしているノルウェーのほうが優れているに決まっている、思いやりで助からない人のほうが多いのだ、などと言われればそれまでだ。

しかし僕はちょっと考え込まざるを得なかった。たしかによく、道にいる物乞いと歩行者が笑いながら話している様子を目にする。僕にとってそれはかなり驚くべきことだった。日本では誰に教わらずとも、そういう人達からは何となく距離をおくものだということを覚えながら育ってきたのだ。

 

住んでお世話になっている僕がいうのもなんだが、ポルトガルはいろいろと"終わっている"国だと言われる。15世紀に一大帝国となり"始まった"国なので、この表現が本当にしっくりくる。セビーリャの地下鉄が小さい子供を連れた家族の活気にあふれているのを見た時に、リスボンの地下鉄のお年寄りの多さ、陰気さを想起してかなりショックを受けた。ドラッグ中毒の人もかつては多かったそうだ。国が取り締まりを緩くした(少量の使用は処罰しないこととした)ことがなんと大成功で、収まったというが。経済力で見ても、明らかにユーロの足を引っ張る国の一つだ。

そんな中で、僕が色々な場面で感じるポルトガル人の心の受け皿のようなものは、誰がどうやったって数値化できない。言葉にするのだって難しい位だと思う。でもそこにちょっと違った種類の幸せを見出すことは決して不可能ではないはずだ。それが過去の栄光を半ば自嘲するように、諦めのにおいを漂わせているものだとしても。

 

 

コンサートが始まる。それはコンサートと聞いて僕が予想していたようなものではなく、年齢層の高い方々向けのものであった。フルアコのギター、ウッドベース、ジャズブラシの音と、どこかのんびりした声の女性の歌。それに合わせて、少しお年を召した方々がステージの前でクラシックな社交ダンスを踊る。余計なお世話だろうか、諦めたものがいくらあろうと、皆幸せに違いない。

人が老いと向き合う運命なら国はそうではないのか。そんなことを考えるには、少し太陽が高すぎる気がした。

音楽:Where Are You Going? - Keith Jarrett