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日本の借金は"ヤバい"のか、について思うこと

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確か小学生の時に、報道番組でこんなやり取りを見た。

日本で消費が落ち込んで景気が悪くなっているというニュースの時だったと思う。経済学者が、政府がもっとお金を刷れば解決する話だ、と主張した。周りの演者は一斉に「へえー」となった。それ以上の説明は特になく、次の話題に移っていった。

特に経済に興味のある子供であったわけではない。しかしとても印象深く覚えている。そうか、お金は刷れば増やせるのか。でもそれってなんとなく、大丈夫ではない気がするけれど。

 

これも小学生くらいのころから何回も聞かされてきたことの中に、「日本は借金大国である」というのがある。これにしたって僕にはピンとこなかった。まず国が借金をする、ということがイメージできなかったからだ。僕は日本の首相が、アメリカの大統領に頭を下げてドルの札束を借りる様子を思い浮かべていた。そんなの借りてどうするんだろう。アメリカのものを買うのかな?

かと思えば、「日本の借金は問題ではない」という向きもある。というわけで、一応経済学部の学生として、このあたりについてちょっと考えてみようと思う。

(以下では、政府の借金である国債と、日銀の借金である日銀当座預金を"日本の借金"とする。何をもって債務とするか、特に後者については議論が多いが)

 

logmi.jp

これは多分有名な記事だろう。麻生さんが、一言で言うと、「日本の財政破綻はない」と言っている。問題はないという論調だ。

概要は読んでいただくとして、少し引用する。

当然円で賄われているから、いざ満期になったときどうすればいいかって、日本政府がやっているんですから、日本政府が印刷して返すだけでしょうが。だって日本円なんだから。簡単なことだろうが。外国に返すんだったら、そりゃドルに替えにゃいかんよ、ユーロに替えにゃいかん。ギリシャはみんなそうです。(日本は)全然違います。だから返さなくていい。

以前この記事を初めて読んだ時、ここに引っ掛かった。単純に考えて、政府が自由自在にお金を印刷して返せるのなら、そもそも国民に借金をする必要がないじゃないか?

当然ながら、政府がお金を刷って国民に返せば解決、というのは非現実的だ。たとえば借りていた分の紙幣を一度に印刷して返そうとすれば、コントロールできないインフレが起こるだろう。

 

「いざ満期になったときどうすればいいかって」というのはうまい言い方かな、と思う。間違ったことを言っているわけではないから。一般的な借金とは"満期"のイメージが異なると考えたほうが良い。

ポイントは、日本政府が借金を"本当に返す"のはいつなのか、という点だ。

toyokeizai.net

簡単に言うと、新しく国債を発行して未来の世代に買ってもらえれば、つまり事実上の"借り換え"を行えば、日本政府は当分の間、ほんとうに借金を返さないままやっていける。

そんなのアリか?と思う。けれどこれが、例えば僕が誰かからお金を借りることと、政府がお金を国民から借りるということの感覚の違いだ。上の記事を書いた人はそれに関する政策に警鐘を鳴らしている。

現在、盛んに議論されている金融政策提言の中でも、アデア・ターナー氏(英金融サービス機構・元長官)やジョセフ・スティグリッツ教授(米コロンビア大学)が主張する大胆な提言では、日銀が保有する国債について「いつまでも返済する必要がない」のであるから「ないもの」とすれば、日本の公的債務問題はずいぶんと解消されるというものである。いったん日銀が保有する国債が無効とされれば、日銀は紙幣や当座預金を返済する原資を永遠に失ってしまう。

一方、クリストファー・シムズ教授(米プリンストン大学)が主張している慎重な提言では、国債の「返済されない度合い」を政策的に微調整できるとして、「当面、返済されない」国債や紙幣が実質価値を下げて物価が上昇することを期待している。

しかし、これら2つの考えは、国債と紙幣が「返済される」という大前提によって1つ1つの通貨取引が守られているこの仕組みを、根底から殺(あや)めてしまう点ではまったく同じである。

私たちの社会にとってきわめて大切な通貨制度の根幹を揺るがしてまで達成しようとすることが、公的債務を踏み倒し、通貨や国債の価値を毀損して物価を上昇させることにあるならば、そのような経済政策は「どうかしている」としかいいようがないと思う。

 

結局、日本の借金は"ヤバい"のか?

注釈で述べたように、"負債"というものをどう捉えるかは人それぞれではある(インターネット上にいくらでも議論が転がっている)。しかし僕は、楽観視できるとはお世辞にも言えないんじゃないかと考えている。増税や物価高騰を防ぐための供給力向上が、日本の財政状況をよくするための正攻法だと思うし、結局はこういうことを長い時間をかけてやっていくしか方法はないはずだ。

 

ただ、これとは別に考えたことがある。この記事になっているような内容を、多くの人が知らないほうがいいし、考えないほうがいい。これが結構重要なことなのではないか。

 

経済学の正しい、正しくないは、人がどう行動するかで変わるといえる。僕自身は上の記事は正論だと思うが、これは「国民が政府にお金を貸している、いつでも返済が期待できる」と皆が考えるならば、の話だ。誰も知らない、もしくは問題視しないのならば、ステイグリッツ教授の方法をとっても問題ないということなのでは?様々な議論を見ていると、僕にはそう感じられた。

現状、日本円のリスクは相当低いと思われている。金利は低いし、北朝鮮のミサイル問題の時でさえ円が買われるくらいだ。しかし、何がきっかけでそれが崩壊するかは誰にもわからない。極端な話、多くの人々が「銀行に預けたお金が返ってこないかもしれない」などと思い始めれば本当に財政破綻してしまうだろう。

 

個人的には、テレビのニュースなどでは楽観的なことだけやっておいて欲しいし、アメリカの学者の言う"社会実験"が、大々的に実行されないことを願っている。預けたお金は必ず返ってくると信じておくほうが幸せだ。お金の価値は紙幣それ自体に在ると考えるほうが幸せだ。それでええ。

  

よくわからないもので大勢の人々の不安が一気に煽られることほど、怖いものはない。

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